令和6年度施政方針

2024年02月28日

 本年1月1日に発生しました、「能登半島地震」におきましては、犠牲となられた方々の御冥福をお祈りするとともに、被災された方々に対して心からお見舞い申し上げます。

 今回の地震で特に甚大な被害に見舞われている輪島市は、熊本地震の際、本市に家屋の被害認定調査に従事する職員を長期にわたり派遣していただいた自治体であります。

 その輪島市に対する支援として、ふるさと納税の代理寄附受付を1月4日から実施しております。

 また、人的な支援として、被災地支援にあたる熊本県チームの一員として、本市職員を派遣し、家屋の被害認定調査等の業務に従事をしております。

 熊本地震、その後の豪雨災害の際に、輪島市をはじめ全国各地から様々な温かい御支援をいただいたおかげで、ここまでの復興へ歩みを進めることができました。

 被災地の復旧・復興はこれから長い道のりになると思います。今後も、引き続き人的・物的支援等を含め、できる限りの対応を続けてまいります。

  さて、昨年を振り返ってみますと、本市におきましては、熊本地震の発生から7年の歳月を経て、待望の新庁舎が完成し、熊本地震の復旧・復興に一応の区切りを迎えたことで、「復旧・復興に向けた守りの行政」から、「未来を見据えた攻めの行政」に舵を切る、大きな節目の年となりました。

 また、3年以上もの長きにわたり、私たちに苦難を強いた、新型コロナウイルス感染症の感染症法上の位置づけが5類に移行したことで、これまで中止や規模の縮小を余儀なくされていた各種イベントや会合が再開され、コロナ前と同様の活気が戻ってきたと感じる年でもありました。

  新たな宇土市がスタートする明るい兆しが見えた年となり、大変喜ばしく感じています。

  しかし、一方では、コロナ禍の影響で冷え込んだ市民生活や地域経済の再生は、かなり厳しい状況が続いており、昨年はこれらに対する支援として、低所得世帯への臨時給付金を始め、子育て世帯に対する給付金や給食費に対する支援、市民への商品券の配布等さまざまな支援を行ってまいりました。

 また、原油価格や物価高騰も長期化の一途をたどり、現在もなお、市民生活や企業活動に大きな影響を与えています。

 市では、更なる支援として、昨年に引き続き、今年も低所得世帯への臨時給付金の支給等を1月末から開始しており、今後は市民への商品券の配布等も行ってまいります。

 今後も、引き続き国や県と連携しながら、市民生活や企業活動をしっかりと下支えできるよう、スピード感を持って支援に取り組んでまいります。

  このように、長引く物価高騰や、相次ぐ自然災害などで、日常生活において、不安を払拭できない日々が続いておりますが、昨年は、本市において、大変喜ばしいニュースも多数ございました。

  まず、スポーツ関係では、全国中学校体育大会において、鶴城中学校の女子ハンドボール部が5年ぶり6度目の優勝に輝いたほか、第101回全国学生相撲選手権大会の個人戦において、本市出身で、日本大学4年生の草野 直哉 (くさの なおや)選手が見事初優勝を飾り、本市出身では5人目となる学生横綱に輝いています。

 また、スポーツ以外の分野においても、本市出身の植田 明依(うえだ   めい)さんが、2024ミス・インターナショナル日本代表選出大会でグランプリに輝き、日本代表に選出されております。

 そのほかにも、様々な分野において、本市出身者のめざましい活躍があり、市民の皆様に夢や希望、そして感動を与えてくれました。

 本年以降も、全国はもとより世界的に活躍する方が増えていくことを願うところであります。

  さて、私自身、市政の舵取り役として、今年は4期目の折り返しの年となります。これまで、マニフェストに掲げた項目をはじめ、市民の皆様からの御提言や御要望なども踏まえ、様々な施策に取り組んでまいりました。

 今年は、残された課題の解決と各種施策の更なる充実を図るべく、初心に立ち返り、果たすべき使命とその責任を再認識し、決意を新たにしているところです。

  現在、各地で人口減少が進むなか、将来に向けて住みよい定住環境の形成に取り組み、「住みたい、住み続けたい」と思うまちづくりが重要な課題となっています。

 そのような状況のなか、本市では、令和5年からスタートした第6次宇土市総合計画後期基本計画に基づき「復興から発展へ 未来へ“輝くふるさと”宇土」の実現を目指し、様々な施策を展開しています。

 人口減少の問題は、全国的にみますと、大都市への一極集中が進み、地方は、衰退の危機にあります。これは、地域ごとにみても同じ傾向であり、熊本県では台湾の半導体製造企業のTSMCの進出もあり、熊本市、熊本市東部近郊の市町村が急激に発展している一方で、その他の市町村は宇土市を含めて軒並み人口が減り続けています。

 宇土市に目を向けますと、熊本市への通勤圏となる東部の宇土・花園地区の人口は増加する一方で、西部の網田、網津、緑川地区は人口減少に歯止めがかからない状態です。

 地域社会を持続させていくためには、定住人口を維持・確保していくことが必要であり、そのためには、安定した社会基盤のもと、生活環境、子育て支援や教育環境の充実など、将来住み続けたいと思う環境づくりが必要となります。

 これまで、未来への投資として重要事業と位置付ける行政主導による土地開発では、企業などから進出候補地として選ばれるまちを目指し、工業、商業、住宅用地の立地調査やその選定作業に取り組んでまいりました。

 さらに、人口減少に歯止めをかけるための定住・移住支援事業では、特に網田、網津、緑川地区を中心とした、西部地区への移住を後押しするための支援策に取り組んでまいりました。

  そして、令和6年は、「九州のド真ん中」をキャッチフレーズに、更なる定住・移住の促進に取り組んでまいります。

 「九州のド真ん中」に「宇土市」があることを、県内はもとより全国に向けてアピールし、「住むなら宇土市、行くなら宇土市、働くなら宇土市」と様々な場面で「宇土市」という選択肢があることを知っていただきたいと考えております。

  そのために、市の組織体制を整え、新たな事業を展開していくことで、これまでの宇土市の殻を打ち破り、世間の注目度を高めていくことを目標としております。

  次に、台湾の台南市との国際交流について申し上げます。

県内では、TSMCの進出により、台湾との経済や観光分野での交流が加速しています。

 そこで、本市におきましても、国際交流事業として、本市にルーツを持つ  湯德章(とう とくしょう)氏(日本名:坂井德章)が、偉大な功績を残した台南市との交流関係の構築に取り組んでいるところでございます。

 その湯德章氏の命日である3月13日は、台南市で「正義と勇気の記念日」として毎年式典が開催されていることから、今回はその式典に合わせて台南市を訪問する予定としております。

 今後、台湾の子どもたちとの教育交流や、経済、観光といった各方面での交流が進展できればと考えておりますので、議員の皆様にも、引き続き御協力をお願いいたします。

  次に、先の令和6年第1回臨時会におきまして、説明いたしました、多目的交流施設整備事業についてです。

 旧田中会館を活用し、図書館機能等を持った交流施設を整備するために、現在、土地、建物の取得を進めているところです。今後、市民の皆様にとって利用しやすく、親しまれる施設となるよう、議会はもとより、市民の皆様や専門家の御意見を十分にお聞きしながら整備を進めてまいります。

  これらの事業を始めとした、未来へつなぐまちづくりで、令和6年が「躍動の年」となるよう、これまで以上に議員の皆様と連携し、市民の皆様の声を大切にしながら、市政運営にまい進してまいりたいと考えておりますので、どうか皆様の御理解と御協力を何とぞよろしくお願い申し上げます。

  それでは、令和6年度の予算案の概要について申し上げます。

  令和6年度の予算編成につきましては、人口減少、少子高齢化が進む一方で、依然として、熊本地震関連で借入れた地方債の償還や、公共施設等の老朽化による維持・更新等に多額の費用を要し、義務的経費に財源を割かれるなど、厳しい財政環境にあります。

 しかし、コロナ禍から、市民生活、企業活動が正常化しつつあるなか、その歩みを止めず、市民ニーズや社会経済情勢の変化等を的確に捉え、未来への「投資」を確実に「成果」に変えていかなければならないと考えております。

  そのようななか、令和6年度は、第6次総合計画に掲げる「2026年の目標人口36,000人」の達成に向けて、住みよい定住環境を形成し、選ばれるまちを目指す予算編成に取り組みました。

 具体的には、ありたい姿に近づけるための『取り組むべき課題の達成』、わかりやすさやインパクトのある『地方創生に向けた課題解決や情報発信につながる事業』、10年20年後を見据えた『未来への種を撒く事業』を中心とした施策に重点を置き、令和5年度を上回る総額227億4,000万円の一般会計予算案を調製いたしました。

  それでは、令和6年度一般会計予算案の主な施策について、宇土市総合計画の基本構想の内容に沿って、御説明申し上げます。

 1点目は、震災復興分野の「“輝く”未来~震災からの復興~」についてであります。

  まず、新庁舎につきましては、現在、仮設庁舎跡地の駐車場の整備工事に着手しており、外構工事を含め、令和6年度にすべての整備が完了予定です。

  また、引き続き、網田地区の交流・防災拠点施設となる、支所機能を併設した網田コミュニティセンターの建築工事を進めてまいります。

  次に、全国的な大規模災害の多発化、甚大化に備え、指定避難所である住吉中学校及び網田小学校の体育館に空調設備を整備し、避難者の生活環境を整えるとともに、避難所の開設時、災害発生時における情報収集、安否確認のため、Wi-Fiルーターによる通信インフラの確保を図ってまいります。

  また、宇土市復興まちづくり事業計画に基づき、緑川小学校敷地内に防災井戸及び備蓄倉庫を設置し、防災設備の充実・強化に努めるとともに、地域における防災活動のリーダーとなる防災士の養成を推進し、資格取得について、助成を行ってまいります。

  このほか、河川氾濫による浸水被害等を軽減するため、網津第二排水機場、松原排水機場及び網田排水機場の整備促進に取り組むとともに、河川の浚渫や改修を行うなど、引き続き、自然災害に対する防災・減災対策の充実に努めてまいります。

  次に、2点目は、教育・文化分野の「“輝く”人~学びのふるさとづくり~」についてであります。

 まず、旧田中会館の施設を活用し、図書館機能のほか、家庭や職場とは異なる「第三の居場所」となるサードプレイスといった機能を備える多目的交流施設の整備や、不登校支援の拠点となる教育支援センターの追加設置に着手してまいります。

 幼児期教育につきましては、幼稚園の一時預かり事業、特別支援教育などを令和6年度も継続して行ってまいります。

 学校教育につきましては、障がいの有無にかかわらず、全ての子どもが共に学ぶためのインクルーシブ教育を推進するため、教育委員会に特別支援教育アドバイザーを配置するとともに、小・中学校の特別支援学級等で支援を行う学級支援員を増員し、支援の充実を図るほか、宇土小学校、花園小学校に校内教育支援センターを設置し、不登校支援の強化を図ってまいります。

 また、小規模特認校制度を推進し、網田小・中学校での少人数で網田でしか学べない特色ある教育活動の展開を図ってまいります。

 スポーツの振興につきましては、運動公園ウォーキングコースやスポーツセンターテニスコートの夜間照明設備等の改修を行い、市民が安全で利用しやすい施設環境の整備に努めます。

  文化遺産の保存・活用につきましては、令和4年度に国指定史跡となりました「轟貝塚」の保存活用計画の作成を進めるとともに、リーフレットを作成し、本市の宝として後世に継承すべく、広く周知を行ってまいります。

  また、市民会館の舞台装置の補修や防水工事等を行い、施設の長寿命化を図ってまいります。

 このほか、宇土市にルーツがある台湾の英雄、湯德章氏と関連が深い、台湾台南市との国際交流を推進してまいります。

  次に、3点目は、保健・福祉・医療分野の「“輝く”絆~安心のふるさとづくり~」についてであります。

  まず、令和6年度から、庁舎内に「こども家庭センター」を設置し、妊娠期から子育て期にわたる切れ目ない支援を行うとともに、適切な相談支援体制を構築してまいります。

 保育所及び放課後児童クラブにつきましては、保育士等の処遇改善や保育補助者の雇用など、保育環境への支援を行っていくほか、宇土東小学校敷地内に放課後児童クラブを増設し、更なる保育環境の充実を図ります。

  高齢者福祉につきましては、令和7年度からの芝光苑の民営化に向けて、譲渡先候補法人との協議を進めてきたところですが、つい先日その法人から、今般の建設費用高騰などの影響を受けて、譲渡の条件としていた期間内の建て替えの見通しが立たないとして、その対応に苦慮しているとの相談があっております。このため、市としても譲渡先とその対応について鋭意協議を進めているところです。

  障がい者福祉につきましては、宇城圏域の市、町と連携し、児童発達支援センターの設置及び医療的ケア児等コーディネーターの配置を行い、地域の支援体制の構築に取り組みます。今後も障がい者の日常生活、社会生活を支援するとともに、市独自の補助であります「在宅介護手当」や「紙おむつ費助成」、「福祉タクシー券の助成」などの支援を継続して実施してまいります。

  このほか、令和5年度に開設した「ふくしの相談窓口」につきまして、令和6年度も継続して取り組んでまいります。

  次に、4点目は、産業・経済分野の「“輝く”産業~活力のふるさとづくり~」についてであります。

  まず、農林業の振興につきましては、「新規就農者支援事業給付金」を創設し、国の支援がない50歳以上65歳未満の新規就農者に対して支援を行います。特に、西部地区に居住し就農した場合には別途加算した給付金を交付します。

  また、令和5年度に引き続き、地域活性化起業人とともに、本市の農産物のPRや販路拡大への取組を推進してまいります。

  水産業の振興につきましては、各漁港の機能保全計画の更新に着手するとともに、浚渫工事を行ってまいります。

  また、熊本県、熊本市、玉名市と共同で実施する浚渫土砂の受入れ地の整備を進めるため、引き続き、住吉漁港の環境影響評価のための調査を行ってまいります。

  このほか、西部地区に農水産加工施設等を整備する事業者に対する「農水産加工施設整備事業補助金」を創設し、西部地区の農水産業を支援してまいります。

  商工業の振興につきましては、市内で新たに創業する中小企業者を対象とした「創業・開業支援補助金」において、これまでの制度に加えて西部地区に特化した優遇制度を拡充します。また、企業誘致を促進するため「企業立地特別奨励金」の要件を緩和し、制度の内容も充実して地域経済の活性化を図ってまいります。

  また、市内の事業所等に就業する若年者を支援するため「奨学金返済支援補助金」を新たに創設し、人材不足をきたしている保育士や看護師などの専門職を始め、地元企業への雇用の確保に努め、定住・移住の促進を図ってまいります。

  観光の振興につきましては、「日本の渚百選」、「日本の夕陽百選」に選定されております「御輿来海岸」を望む島山の干潟景勝地の展望広場の早期整備に向けて、駐車場の整備やアクセス道路の拡幅工事に着手してまいります。

 また、ONE PIECE熊本復興プロジェクトによりジンベエ像が設置された住吉海岸公園の整備を行い観光の拠点づくりを図ってまいります。

  次に、5点目は、生活環境・都市基盤分野の「“輝く”まち~安全のふるさとづくり~」についてであります。

 土地利用の促進、市街地の整備につきましては、地域経済の発展や定住移住の促進に向けて、有効的な土地利用方法を調査・検討していくとともに、本市への定住移住はもとより、西部地区への定住移住に特化した新たな優遇制度を創設してまいります。

  道路・交通網の整備につきましては、令和2年度から着手しております都市計画道路「北段原線」の未整備区間の整備を進めていくとともに、新たな都市計画マスタープランを策定し、未来に向けたまちづくりを推進してまいります。

  また、新たに、地域活性化起業人を活用して、公共交通ネットワークの構築や利便性の向上に取り組んでまいります。

  環境保全につきましては、市役所駐車場敷地内に常設の資源ごみ回収所を設置し、新たな分別方法の定着を図るとともに、新たな環境基本計画を策定し、更なる環境の保全に取り組んでまいります。

  次に、住民協働・行財政運営についてであります。

  まず、現在のホームページやインスタグラム等のSNSのほか、LINEアカウント連携システムサービスを利用して、市民への細やかな最新の情報提供や緊急連絡等の充実を図ってまいります。

  また、庁舎内でコンビニと同様に住民票等の証明書を取得できるよう、マルチコピー機を導入し、行政手続きのデジタル化及び簡素化に取り組んでまいります。

  財政健全化につきましては、新庁舎の完成とともに、熊本地震関連で借り入れた地方債の償還が本格化し、令和18年度まで続いてまいります。現在の物価高騰、地域経済の状況を把握しながら、今後も行政運営の効率化・円滑化に取り組む必要があると考えております。

  歳入面におきましては、企業誘致活動を通して、地域経済の活性化、税収等の確保に積極的に取り組む必要があると考えております。

 また、今年度も「ふるさと宇土応援寄附金」として全国の皆様から多くの寄附をいただいております。いただきました御厚意を無駄にすることなく、行政運営に活用させていただきたいと思っております。

  最後に、「地区のまちづくり計画」についてであります。

 本市の7つの地区は、地区ごとに歴史や文化などの地域資源、特性があり、抱えている課題も違います。令和6年度は、網田、網津、緑川の西部地区に特化した施策をはじめ、浜戸川運動広場周辺のかわまちづくりも地域との連携のもと計画実現に向けて取り組みが進んでおります。引き続き、分野ごとの各種施策と併せまして、地区の特性を活かすためのまちづくりを展開してまいりたいと考えております。

  以上、市政運営における基本的な考え方と主な施策について申し上げましたが、令和6年が大きく「躍動」する年となるよう、全力で取り組んでまいる所存でございます。

 議員の皆様をはじめ、市民の皆様には、なお一層の御理解と御協力をお願い申し上げ、私の施政方針といたします。

 


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担当部署:宇土市役所 総務部 総務課 行政係

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